葬儀の進行と当日の流れ

精進落としをしない場合|流れ、マナー、挨拶の例文

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宮坂
宮坂
「本当に精進落としをしなくても失礼にあたらないのだろうか?」「その場合、どのように挨拶をすれば良いのだろう?」「何か代わりのもので感謝の気持ちを伝えられないだろうか?」と、不安や疑問を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、そんな「精進落としをしない場合」に焦点を当て、その理由から具体的な挨拶の例文、返礼品について、詳しく解説していきます。

大切な故人を見送った後のひとときを、心穏やかに、そして参列してくださった方々へ失礼なく感謝を伝えられるよう、お手伝いできれば幸いです。

精進落としとは?

精進落としの本来の意味

精進落とし(しょうじんおとし)は、元々、仏教の教えに基づき、四十九日の忌明けまで肉や魚などの生臭物を断つ「精進期間」を終え、通常の食事に戻ることを意味していました。

この際、僧侶や葬儀でお世話になった方々を招いて会食を開き、労をねぎらうとともに、故人の冥福を祈り、供養とするのが習わしでした。

しかし、現代では火葬当日に初七日法要を繰り上げて行い、その後に精進落としの席を設ける「繰り上げ初七日」が一般的になっています。

この場合の精進落としは、葬儀が無事に終わったことへの感謝と、参列者や僧侶への慰労、そして故人を偲ぶための会食という意味合いが強くなっています。

宗教・宗派による精進落としの違い

仏教では、故人の冥福を祈るために様々な儀式が行われますが、その中でも精進落としは、故人を偲び、参列者への感謝の気持ちを表す大切な儀式です。

浄土真宗では、精進落としの概念がないため、食事の席を設けないこともあります。このように宗派によって、儀式の形式や考え方が異なるため、事前に確認するようにしましょう。

神道では、精進落としの代わりに、直会(なおらい)と呼ばれる会食を行うことがあります。キリスト教では、特に決まった儀式はありませんが、教会で食事を共にすることがあります。

「精進落としをしない場合」が増えている理由

近年、この精進落としを行わない、あるいは簡略化するケースが増えています。その背景には、いくつかの社会的な変化や価値観の多様化があります。

家族葬の増加

家族葬の増加

最も大きな理由の一つが、家族やごく親しい親族のみで行う「家族葬」の普及です。参列者が少人数であるため、改まった会食の席を設けない、あるいは必要性を感じないというケースが増えています。

参列者の高齢化や遠方からの参列

参列者の中には、高齢の方や遠方から駆けつけてくださる方もいらっしゃいます。葬儀・告別式、火葬と長時間にわたる儀式の後、さらに会食となると、体力的な負担が大きくなることがあります。こうした方々への配慮から、精進落としを省略する判断も増えています。

コロナ禍以降の意識の変化

新型コロナウイルス感染症の流行は、大人数での会食を控える動きを加速させました。感染対策の観点から精進落としを中止した経験が、その後の葬儀のあり方にも影響を与え、「必ずしも行わなくてもよい」という認識が広がった側面もあります。

費用面の考慮

葬儀全体の費用を抑えたいというニーズも、精進落としをしない選択につながることがあります。会食にかかる費用は決して少なくないため、その分を香典返しや他の形で感謝を伝えることに充てるという考え方です。

故人や遺族の意向

「参列者に気を使わせたくない」「形式ばったことは好まない」といった故人の遺志や、遺族の考えによって、精進落としを行わないこともあります。

精進落としをしない場合のメリット・デメリット

メリット・デメリットを考慮し、故人や遺族、参列者の状況に合わせて最適な判断をするようにしましょう。

精進落としをしない場合のメリット

「精進落としをしない場合」、いくつかのメリットがあります。

  • 費用の軽減: 会食にかかる費用(料理、飲み物、会場費など)を抑えることができます。
  • 時間的な負担の軽減: 葬儀後の会食がなくなるため、遺族も参列者も早く帰宅でき、特に遠方からの参列者や高齢者にとっては負担が軽減されます。
  • 準備の手間削減: 会場の手配、料理の選択、出欠確認などの手間が省けます。
  • 故人や遺族の意向を尊重できる: 形式にとらわれず、静かに故人を偲びたい、参列者に負担をかけたくないといった意向を反映できます。

精進落としをしない場合のデメリット

「精進落としをしない場合」、多くのメリットがある一方で、事前に理解しておくべきデメリットや注意点も存在します。

  • 参列者への感謝を直接伝える機会の減少: 会食の場は、参列者一人ひとりに感謝の言葉を伝えたり、故人の思い出を語り合ったりする貴重な機会です。これがないと、ややあっさりとした印象になる可能性があります。
  • 故人をゆっくり偲ぶ時間の短縮: 親族や親しい友人たちが集い、故人との思い出を語り合う場が少なくなるかもしれません。
  • 僧侶への配慮不足と受け取られる可能性(対策が必要): 僧侶にも会食に同席いただくのが一般的だったため、何らかの配慮が必要になります。
  • 一部の参列者から理解を得られない可能性: 伝統的な葬儀を重んじる方や地域によっては、精進落としを行わないことに戸惑いや不満を感じる方がいるかもしれません。

精進落としをしない場合の対応

事前の連絡と相談が重要

特に親族には、精進落としを行わない旨とその理由を事前に伝えておくことが大切です。葬儀の準備段階で、故人の意向や家族の考え、参列者の状況などを踏まえて相談し、理解を得ておくことで、当日の混乱や不快な思いを避けることができます。

葬儀社との打ち合わせの際にも、精進落としを行わない意向を伝え、今後の流れや必要な手配について確認しましょう。

僧侶への配慮:御膳料について

僧侶への配慮:御膳料について

精進落としを行わない場合でも、読経や法話などでお世話になった僧侶への感謝の気持ちを表すことは大切です。通常、精進落としの席に僧侶をお招きしますが、それをしない場合は「御膳料(おぜんりょう)」をお渡しするようにしましょう。

御膳料とは、僧侶が会食に同席されない場合に、お食事代の代わりとしてお渡しする金銭のことです。一般的な相場は5,000円〜10,000円程度とされていますが、これは地域の慣習や、寺院との関係性によって異なる場合があります。

御膳料は白無地の封筒に入れ、表書きには「御膳料」と記します。お布施とは別に用意し、葬儀終了後にお布施とあわせて僧侶にお渡しするのが一般的です。

お渡しする際には、「本日はお心のこもったお勤め、誠にありがとうございました。本来であればお食事の席をご用意すべきところではございますが、誠に勝手ながら本日は用意がございません。どうぞこちらをお納めください」といった一言を添えると、より丁寧な印象になります。

精進落としをしない旨の伝え方

精進落としをしない場合は、葬儀の案内状や受付、当日の挨拶で、食事の用意がない旨を明確に伝えるようにしましょう。

案内状には「誠に恐縮ながら、精進落としの席は設けず、粗餐をご用意させていただきます」などと記載します。当日の挨拶では「本日はご多忙の中、ご参列いただき誠にありがとうございます。ささやかではございますが、お弁当をご用意いたしましたので、お持ち帰りいただければ幸いです」などと伝えます。

案内状では、丁寧な言葉遣いを心がけ、参列者への配慮を示すことが大切です。「粗餐」という言葉を使うことで、簡素な食事であることを伝えることができます。当日の挨拶では、参列への感謝の気持ちとともに、お弁当を用意した理由を説明することで、参列者の理解を得ることができます。

精進落とししない場合の挨拶例文

葬儀・告別式終了時の挨拶(精進落としなしを伝える場合)

「本日はご多忙中のところ、故〇〇(故人の名前)のためにお集まりいただき、誠にありがとうございました。皆様のお心のこもったお見送りにより、滞りなく葬儀・告別式を執り行うことができましたこと、厚く御礼申し上げます。

故人も、皆様にこうして温かく送っていただき、さぞかし喜んでいることと存じます。

さて、本来であれば、この後お食事の席を設け、皆様にごゆっくりお過ごしいただくべきところでございますが、誠に勝手ながら、本日はこれにてお開きとさせていただきたく存じます。

ささやかではございますが、感謝のしるしとしてお持ち帰りいただけるものをご用意いたしましたので、どうぞお納めください。

生前、故人が皆様から賜りましたご厚情に心より感謝申し上げますとともに、今後とも私ども遺族に変わりなきご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。」

火葬後、解散時の挨拶(お弁当などを渡す場合)

「皆様、本日は〇〇(故人の名前)の葬儀、そして火葬とお付き合いいただき、誠にありがとうございました。おかげさまで、滞りなく最後のお見送りをすることができました。故人も安堵していることと存じます。
さて、この後、精進落としの席を設けるべきところではございますが、本日は皆様のお疲れも考慮し、また故人の生前の意向もございまして、お食事の席は省略させていただきました。

代わりと言っては甚だ失礼ではございますが、心ばかりの折詰をご用意いたしましたので、どうぞお持ち帰りいただき、ご自宅でゆっくりとお召し上がりいただければと存じます。

今後とも、故人の生前と変わらぬご厚情を賜りますよう、お願い申し上げます。本日は長時間にわたり、誠にありがとうございました。お気をつけてお帰りください。」

親族控室などでの挨拶(近親者中心の場合)

「本日は、〇〇(故人の名前)のためにお集まりいただき、本当にありがとうございました。皆様のおかげで、温かい雰囲気の中で〇〇を見送ることができました。
この後、ゆっくりと食事でもしながら思い出話でも…とも考えたのですが、皆さんもお疲れでしょうし、〇〇もあまり形式張ったことは好まない人でしたので、今日はこれでお開きにしたいと思います。

何かと至らぬ点も多かったかと存じますが、お許しください。
後日、改めて皆で集まる機会なども考えたいと思いますので、その時はまたよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。」

僧侶へのお礼の言葉(御膳料を渡す際)

「〇〇和尚様(僧侶の名前)、本日は誠に丁寧なお勤め、ありがとうございました。おかげさまで、故〇〇も安らかに旅立つことができたと存じます。

本来であれば、お食事の席をご用意し、ご一緒いただくべきところではございますが、誠に勝手ながら本日はこれにて失礼させていただきます。こちらは心ばかりではございますが、御膳料としてお納めいただければ幸いです。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。」

精進落としをしない場合の返礼品とお弁当

持ち帰り用のお弁当(仕出し弁当・折詰)

最も一般的な「精進落としの代わり」の一つで、 葬儀社に手配を依頼できる場合が多く、手間がかかりません。内容は和食が中心で、上品なものが選ばれます。

お弁当は、持ち帰りやすく、日持ちのするものがおすすめです。アレルギーを持つ参列者がいる場合は、事前に確認しておきましょう。

季節によっては食中毒に注意が必要です(特に夏場)。保冷剤をつけるなどの配慮をしましょう。

返礼品・香典返しを充実させる

精進落としを行わない分、香典返し(即日返しを含む)の品物を充実させるという方法があります。具体的には、返礼品のグレードを少し上げたり、品数を増やしたりすることで、会食を省いた分の費用を参列者への感謝の気持ちとして形にすることができます。

この方法を選ぶことで、参列者には質の高い品物を通じて丁寧なおもてなしの気持ちが伝わりやすくなります。また、遺族にとっても、会食の準備や段取りにかかる労力を省くことができ、負担を軽減することにつながります。

香典返しとは別に「お食事代の代わり」であることがわかるように、一言添え状をつけるなどの工夫をすると、気持ちが伝わりやすくなります。

カタログギフトや商品券

精進落としを行わない場合には、カタログギフトや商品券を用意するケースも増えています。受け取った方が自分の好みに合わせて品物を選べるため、近年では非常に人気のある贈り物のひとつです。

カタログギフトや商品券は、年齢や性別を問わず喜ばれやすく、荷物になりにくいという点も特徴です。参列者自身が本当に必要としているものを選ぶことができるため、形式にとらわれすぎない、柔軟で心配りの感じられる対応として評価されています。

金額が直接的に分かってしまうため、相手によっては失礼だと感じる場合もあるかもしれません。

精進落としをしない場合のよくある質問

親族から「精進落としをしないのはおかしい」と反対された場合はどうすればいいですか?

精進落としを行わない理由(故人の意向や参列者への配慮など)を丁寧に説明し、冷静に話し合いましょう。納得が得られない場合は、親族だけで簡単な食事をとるなど柔軟な対応も検討をしましょう。また葬儀社に相談するのも一つの方法です。

遠方からの参列者が多い場合、精進落としをしないのは失礼にあたりますか?

遠方からの参列者にとっては、葬儀後に会食がない方が移動や体力面で助かることもあります。早めに解散できる配慮として喜ばれる場合もあるため、失礼にはあたりません。ただし、感謝の気持ちをしっかり伝えることが大切です。挨拶に丁寧な言葉を添え、お弁当や手土産を用意するようにしましょう。。

精進落としの代わりのお弁当は、いつ注文すればいいですか?

葬儀の日程が決まったら、なるべく早めに葬儀社に相談し、手配を進めましょう。特に葬儀が混み合う時期や、特別な料理を希望する場合は、直前だと対応できないこともあります。数量の変更などにも柔軟に対応してくれるか、アレルギー対応は可能かなども確認しておくと安心です。

精進落としをしない場合、香典の金額に影響はありますか?

一般的に、精進落としの有無が香典の金額に直接影響することはありません。香典は故人への弔慰や遺族への支援の気持ちを表すものであり、会食の有無で金額を調整するものではないからです。
ただし、遺族側としては、精進落としを行わない分、香典返しを少し手厚くするなどの配慮をすることはあります。

ごく少人数の家族葬でも、精進落としをしない場合、挨拶は必要ですか?

ごく少人数の家族葬でも、感謝の気持ちを伝える挨拶は大切です。形式ばる必要はなく、「本日はありがとうございました」「また改めてお話ししましょう」など、心のこもった一言があるだけで印象は大きく変わります。精進落としを行わない場合は、特に言葉での配慮が重要です。

まとめ

葬儀の形が多様化する現代において、「精進落としをしない」という選択は、決して珍しいことではなくなりました。大切なのは、形式にとらわれることではなく、故人を心から偲び、参列してくださった方々へ感謝の気持ちを誠実に伝えることです。

精進落としをしない場合でも、心のこもった挨拶や、温かい気持ちが伝わる精進落としの代わりの品を用意することで、十分にその想いを形にすることができます。

この記事でご紹介した内容が、皆様の不安を少しでも和らげ、故人との最後のお別れの時間をより良いものにするための一助となれば、幸いです。