葬儀の基礎知識と準備

葬儀にお坊さんはいらない?後悔しないための選択ガイド

葬儀にお坊さんはいらない? 後悔しないための選択ガイド
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宮坂
宮坂
「葬儀の準備、何から始めたらいいのだろう…」「お坊さんは必ず呼ばないといけないのかな?」大切な方とのお別れの場面で、そうした疑問や不安を抱える方は少なくありません。

この記事では、なぜ今「葬儀にお坊さんはいらない」と考える方が増えているのか、その背景を深掘りし、お坊さんを呼ばない葬儀(無宗教葬など)とは具体的にどのようなものなのか、そしてそのメリットやデメリット、後悔しないために知っておくべき注意点について、分かりやすく解説します。

葬儀でお坊さんを呼ばないという選択

かつては、葬儀といえばお坊さんにお経をあげてもらうのが当たり前という風潮がありました。しかし、時代と共に私たちの意識や社会構造は変化し、それに伴い葬儀のあり方も多様化しています。

価値観・宗教観の多様化と変化

現代の日本では、特定の宗教を熱心に信仰しているという人が減少傾向にあります。内閣府の調査などでも、無宗教層の割合が増えていることが示されています。こうした背景から、葬儀においても特定の宗教儀礼にこだわらず、故人らしさや家族の想いを優先したいと考える人が増えています。

菩提寺との関係性の希薄化

かつては地域社会とお寺が密接に関わり、「家」制度のもとで菩提寺との付き合いが代々受け継がれてきました。しかし、核家族化が進み、都市部への人口集中によって地元を離れる人が増えた結果、菩提寺との関係が疎遠になったり、そもそも菩提寺がないという家庭も珍しくありません。

「お寺さんとのお付き合いがほとんどないのに、葬儀の時だけお坊さんを呼ぶのはどうなのだろう?」と感じる方もいらっしゃるでしょう。また、お寺の檀家制度そのものに馴染みがない世代も増えています。

経済的な理由と葬儀費用の透明化

葬儀費用の中でも、お坊さんへのお布施は金額が明瞭でない場合があり、不安を感じる要因の一つとされてきました。もちろん、お布施は読経や戒名授与に対する対価ではなく、ご本尊へのお供えや寺院維持のための寄付という意味合いがありますが、その金額の目安が分かりにくいと感じる方も少なくありません。

近年では、葬儀費用の透明化が進み、内訳が明確なプランも増えてきています。そうした中で、「費用を少しでも抑えたい」「何にどれくらいかかるのか納得して支払いたい」というニーズから、お布施の負担を考慮してお坊さんを呼ばない選択をするケースも見られます。

故人の遺志としての「無宗教」

生前からご自身の葬儀について具体的な希望を家族に伝えている方も増えています。その中で、「自分の葬儀にお坊さんは呼ばないでほしい」「宗教的な儀式はしないでほしい」といった遺志が示されることもあります。

故人様が特定の宗教観を持っていなかったり、形式ばったことを好まない性格だったりする場合、遺された家族としてはその想いを最大限に尊重したいと考えるのは自然なことです。故人のライフスタイルや考え方を尊重した結果、お坊さんを呼ばない葬儀を選択するケースも増えています。

「お坊さんなし」の葬儀の種類

無宗教葬(自由葬)

無宗教葬(むしゅうきょうそう)は、特定の宗教的な儀礼や形式にとらわれず、文字通り自由に内容を組み立てることができる葬儀のスタイルです。

「自由葬」とも呼ばれます。お経の読経や焼香といった宗教儀式を行わない代わりに、故人の好きだった音楽を流したり、思い出の品々を飾ったり、参列者からのメッセージを読み上げたりと、故人の人となりや個性を最大限に表現できるのが大きな特徴です。

式次第も決まったものはなく、故人を偲ぶスライドショーの上映、献花、黙祷、お別れの言葉など、家族や親しい人たちが中心となって、故人にふさわしいオリジナルのセレモニーを創り上げることができます。「故人らしさを大切にしたい」「形式ばらず温かい雰囲気でお別れしたい」と考える方に選ばれています。

  • 特徴:宗教的意味合いを持たない、完全オリジナルの葬儀。
  • 例:友人による手紙の朗読、生演奏、ビデオ上映など

直葬・火葬式

直葬(ちょくそう・じきそう)または火葬式(かそうしき)は、お通夜や告別式といった儀式を一切行わず、ごく限られた近親者のみで火葬場へお連れし、火葬のみを行う最もシンプルな形式のお見送りです。宗教儀礼を伴わないため、当然お坊さんはいらないケースがほとんどです。

費用をできる限り抑えたい場合や、故人様やご遺族の強い希望で質素に送りたい場合、また、諸事情により儀式を行うことが難しい場合に選ばれます。お別れの時間は短くなりますが、静かに故人を見送りたいという想いを形にする一つの方法です。

  • 費用:10万円〜30万円程度
  • 時間:1〜2時間程度
  • 特徴:参列者も少人数。無宗教や高齢者単身世帯に選ばれることが多い。

一日葬(宗教者なしの場合)

一日葬(いちにちそう)は、お通夜を行わず、告別式と火葬を一日で執り行う葬儀形式です。時間的・体力的な負担を軽減したいと考えるご遺族や、遠方からの参列者が多い場合に選ばれることがあります。

この一日葬を、宗教者を呼ばずに行うことも可能です。その場合、告別式の内容は上記の無宗教葬(自由葬)のように、宗教色を排した自由な形式で執り行うことができます。限られた時間の中で、故人との最後の時間を大切に過ごしたいというニーズに応える形です。

  • 費用:30万円〜60万円程度(内容により変動)
  • 特徴:お別れの場を持ちたいが、簡素に済ませたい人に適している。

「お経をあげないと成仏できない」?

「お経をあげないと成仏できない」?

「お経をあげてもらわないと、故人は成仏できないのではないか…」これは、お坊さんを呼ばない葬儀を考える際に、多くの方が抱く疑問や不安の一つではないでしょうか。特に、これまで伝統的な仏式の葬儀に慣れ親しんできた方にとっては、切実な問題です。

仏教的な立場から

「お坊さんが読経しないと故人が成仏できないのでは?」という不安を感じる方も少なくありません。これは日本人に根強く残る仏教的世界観の一つであり、伝統的な仏式葬儀では、読経や戒名授与が死後の安寧を祈る重要な儀式とされています。

しかし、これが「お経がなければ絶対に成仏できない」ということを意味するわけではありません。仏教の教えの中にも、例えば浄土真宗のように、「阿弥陀仏の本願力を信じ念仏を称えれば誰でも往生できる(成仏できる)」とする宗派もあります。

この場合、お経や儀式は故人のためというよりも、むしろ遺された私たちが仏様の教えに触れ、感謝の念を深めるためのものと捉えられています。

大切なのは故人の信仰と遺族の想い

最も重要なのは、故人様ご自身がどのような信仰を持っていたか、あるいは持っていなかったか、そして遺されたご家族がどのような形でお見送りしたいかという点です。

故人様が生前から特定の宗教を信仰しておらず、「自分の葬儀は宗教色なしで」と望んでいたのであれば、無理に宗教儀礼を行うことは故人の遺志に反することになりかねません。

「お坊さんがいらない=成仏できない」という単純な図式で考えるのではなく、故人がどのような価値観で人生を歩んできたのか、そして遺された家族がどのような想いで故人を送り出したいのか、という点にこそ焦点を当てるべきでしょう。

お坊さんがいなくても心のこもった供養はできる

供養の本質とは、豪華な祭壇や形式的な儀式にあるのではなく、故人を偲び、その存在に感謝し、安らかな旅立ちを願う心にあるはずです。お坊さんによる読経がなくても、家族や親しい人々が集い、故人の思い出を語り合い、感謝の言葉を捧げ、静かに手を合わせる時間は、十分に心のこもった供養となります。

お経がないからといって、故人の魂が迷うと考える必要はありません。故人の冥福を祈る気持ちに、宗教の有無は関係ないのです。

お坊さんなし葬儀のメリット・デメリット

お坊さんなし葬儀のメリット

お坊さんを呼ばない葬儀を選択することには、いくつかのメリットがあります。

  • 葬儀費用を大幅に抑えられる:お布施(3万〜50万円)や戒名料が不要
  • 宗教色のない自由な内容が可能:自由な形式で故人を送れる
  • 故人の希望を尊重しやすい:故人の個性や生前の遺志を葬儀に反映させやすい
  • 準備が簡単で短期間で実施できる:お坊さんの予定に合わせる必要がない

お坊さんなし葬儀のデメリット

お坊さんを呼ばない葬儀には多くのメリットがある一方で、事前に理解しておくべきデメリットや注意点も存在します。

  • 菩提寺がある場合、関係に影響:納骨を断られてしまう可能性がある
  • 親族の理解が得られない場合がある:特に年配の方や信仰心の篤い方から強く反対される
  • 葬儀の進行役や儀式の中心が不在:「何だか寂しい」「物足りない」と参列者が感じる場合がある。
特に菩提寺との関係がある家庭では、無断でお坊さんを呼ばない葬儀を行うと、後々の納骨や法要でトラブルになることもあるため、事前に相談が必要です。

お坊さんなしで故人を見送る

お坊さんなしで故人を見送る

お坊さんを呼ばない葬儀は、形式にとらわれない分、自由な発想で故人を見送ることができます。

故人の好きだった音楽や映像で空間を彩る

故人が生前よく聴いていた曲、思い出の曲などをBGMとして流すことで、会場全体が温かい雰囲気に包まれます。可能であれば、プロの演奏家による生演奏を取り入れるのも素敵です。

また、故人の若かりし頃の写真や家族との思い出の写真をスライドショーにして上映したり、ビデオレター形式でメッセージを流したりする「メモリアルムービー」も、参列者の心に深く残る演出となるでしょう。

「メモリアルコーナー」の設置

会場の一角に、故人の愛用品や趣味の道具、手作りの作品、旅行先での写真などを展示する「メモリアルコーナー」を設けるのも一つの方法です。

参列者はそれらの品々を眺めながら、故人との思い出話に花を咲かせることができます。故人がどのような人生を歩み、何を大切にしていたのかを視覚的に伝えることで、より深く故人を偲ぶことができます。

参列者からのメッセージや手紙で想いを繋ぐ

受付や会場内にメッセージカードを用意し、参列者一人ひとりが故人への感謝の言葉や思い出を綴り、集めたメッセージは、出棺の際に棺に納めたり、後日遺族がゆっくりと読んだりすることができます。

また、式の進行の中で、代表者数名に故人への「弔いのメッセージ」や「思い出話」を語ってもらう時間を設けることで、故人への想いがより一層深まります。

献花や黙祷を中心としたシンプルで厳粛なセレモニー

厳粛な雰囲気でお別れをしたいという場合には、献花と黙祷を中心としたシンプルなセレモニーが適しています。

祭壇に飾られた故人の遺影に向かい、参列者一人ひとりが静かに花を手向け、故人の冥福を祈り、感謝の気持ちを込めて黙祷を捧げることで、故人との最後のお別れを深く心に刻むことができます。

式の進行は、葬儀社のスタッフに依頼するか、遺族の代表者が行います。

お坊さんを呼ばない葬儀をする際の葬儀社選びのポイント

お坊さんを呼ばない葬儀、特に無宗教葬や自由葬を成功させるためには、葬儀社選びが非常に重要なポイントとなります。

無宗教葬・自由葬の実績が豊富な葬儀社を選ぶ

すべての葬儀社が無宗教葬や自由葬を得意としているわけではありません。伝統的な仏式の葬儀を中心に扱ってきた葬儀社の場合、宗教儀礼のない葬儀のノウハウが乏しいこともあります。

まずは、無宗教葬や自由葬の施行実績が豊富かどうかを確認しましょう。実績豊富な葬儀社であれば、形式にとらわれず、遺族の様々な要望に柔軟に対応してくれる可能性が高いです。

要望に柔軟に対応してくれるか

無宗教葬や自由葬は、決まった形がないからこそ、遺族の「こうしたい」という想いを形にすることが大切です。そのため、こちらの細かな要望に対しても親身に耳を傾け、「できない」と最初から決めつけるのではなく、「どうすれば実現できるか」を一緒に考えてくれる姿勢がある葬儀社を選びましょう。

例えば、「故人の好きだった○○を飾りたい」「こんな演出を取り入れたい」といった具体的な要望に対して、前向きに検討し、プロの視点からアドバイスをくれるかどうかがポイントになります。

具体的な提案力があるか

単に「お坊さんなしですね」と事務的に対応するのではなく、故人の人となりや家族の想いを深く理解しようと努め、その内容に基づいて、具体的なプランや演出を複数提案してくれる葬儀社は期待を裏切ることはないでしょう。

また、見積もりについても、何にどれくらいの費用がかかるのか、追加料金が発生する可能性はあるのかなど、透明性が高く分かりやすい説明をしてくれるかどうかも判断材料のひとつになります。

よくある質問

菩提寺があり、お坊さんを呼ばずに葬儀をしたら、納骨を断られてしまいますか?

可能性は否定できません。多くの菩提寺では、そのお寺の住職に葬儀(読経や引導)を執り行ってもらい、戒名を授かることが納骨の条件となっている場合があります。まずは必ず、葬儀の事前(できればお亡くなりになる前、あるいは直後)に菩提寺のご住職に正直に相談しましょう。

親族に「お坊さんを呼ばないなんてありえない」と反対されています。どうすれば理解してもらえますか?

まずは、反対されている親族の方の気持ちに寄り添い、なぜそのように考えるのかをじっくりと聞くことが大切です。その上で、なぜ自分たちがお坊さんを呼ばないという選択をしたのか(故人の強い遺志であった、経済的な理由、故人が無宗教だったなど)を、感情的にならずに丁寧に説明しましょう。

葬儀費用は具体的にお坊さんを呼ぶ場合と比べてどれくらい変わりますか?

お坊さんへのお布施の金額は、地域や宗派、お寺の格、戒名のランク、依頼するお坊さんの人数(例えば導師1名、脇僧2名など)によって大きく異なります。あくまで目安ですが、一般的な葬儀(通夜・告別式)でのお布施の総額は、20万円~60万円程度、場合によってはそれ以上になることもあります。

戒名がないと、お墓に入れない?

これは、どのお墓に入るかによって異なります。菩提寺のお墓(寺院墓地)に納骨する場合は、そのお寺の檀家であることの証として戒名が必要とされることが一般的です。しかし、近年増えている公営墓地や民営霊園では、「宗教不問」を掲げているところが多く、そのような場所では生前の名前(俗名)のままで納骨できるケースがほとんどです。

お坊さんを呼ばない場合、葬儀の進行は誰が行うのか?

お坊さんを呼ばない葬儀(無宗教葬・自由葬など)の場合、葬儀の司会進行は、葬儀社のスタッフが務めるのが一般的です。もちろん、遺族や故人の友人が司会の一部を担当したり、進行に積極的に関わったりすることも可能です。

まとめ

葬儀でお坊さんを呼ばないという選択は、故人や家族の意向を尊重した自由な葬儀を行うための選択肢の一つです。

しかしお坊さんを呼ばない葬儀は、費用を抑えられたり、自由度の高い葬儀を行えたりするメリットがある一方で、菩提寺との関係が悪化したり、親族からの理解を得られなかったりするデメリットもあります。

そのため、お坊さんを呼ばない葬儀を行う場合は、事前にしっかりと準備をしておくことが大切です。

まず、菩提寺がある場合は、お坊さんを呼ばない葬儀を行うことへの影響を確認しましょう。納骨の可否や、今後の付き合い方など、事前に話し合っておくことが大切です。

次に、親族に、お坊さんを呼ばない理由を説明し、理解を得るように努めましょう。特に、年配の親族は従来の形式を重んじる傾向があるため、丁寧な説明を心がけましょう。

また、故人の遺志を尊重することも大切です。故人が生前、葬儀の形式について希望していた場合は、その遺志を尊重するようにしましょう。もし、遺志が不明な場合は、家族で話し合い、故人が喜ぶような葬儀を検討しましょう。

お坊さんを呼ばない葬儀でも、故人を偲び、感謝の気持ちを伝えることはできます。この記事を参考に、故人を偲び、心に残るお別れの時間を過ごしてください。