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浄土真宗の精進落とし|意味・マナー・料理まで徹底解説

浄土真宗の精進落とし|意味・マナー・料理まで徹底解説
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宮坂
宮坂
「浄土真宗の葬儀や法要を控え、『精進落とし』についてどうすればよいか、迷いや疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

実は、浄土真宗における『精進落とし』は、私たちが普段思い描くものとは異なる、独自の考え方と意味合いがあります。

この記事では、浄土真宗の教えに基づいた『精進落とし』の本来の意味、それに代わる大切な会食『お斎(おとき)』の意義、知っておきたい具体的なマナーやふさわしい料理、そして近年増えている『お斎(精進落とし)をしない場合』の心遣いのある対応方法まで、詳しく解説していきます。

故人を偲び、心穏やかにお見送りするための確かな知識として、お役立ていただければ幸いです。

浄土真宗における精進落としとは

まず、最も大切なポイントとして、浄土真宗の教えにおいては、私たちが一般的にイメージする「精進落とし」や「精進上げ」という考え方や習慣は、本来存在しません。

浄土真宗の基本的な教え

浄土真宗の教えの根幹には、「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」という考え方があります。これは、、阿弥陀如来を深く信じ、念仏を称える者は、亡くなるとすぐに阿弥陀如来のお力によって極楽浄土に往き生まれて仏になる、というものです。

他の多くの仏教宗派では、故人が成仏するためには、四十九日間の冥途の旅を経て、遺族による追善供養が必要とされることがあります。この期間、遺族は故人の無事な成仏を願い、肉や魚などの生臭物を断つ「精進」を行うという習慣がありました。

そして、四十九日の「忌明け(きあけ)」をもって精進期間が終わり、通常の食事に戻ることを「精進落とし」や「精進上げ」と呼んでいたのです。

しかし、浄土真宗では、故人は亡くなると同時に仏様になると考えます。そのため、故人の成仏を願って遺族が「精進」をする必要も、四十九日間の「忌中(きちゅう)」という考え方も、厳密にはありません。

浄土真宗における「精進」という考え方について

「精進」という言葉は、仏道修行に励むことを意味します。しかし、浄土真宗の開祖である親鸞聖人は、私たち凡夫(ぼんぶ:煩悩にまみれた普通の人間)は、自らの修行や努力によって悟りを開き成仏することはできない、と説かれました。

ただ阿弥陀如来の本願力(すべての人を救おうとする力)を信じ、お任せすることによってのみ救われる(他力本願)というのが浄土真宗の教えです。

そのため、浄土真宗では、成仏のために特定の期間、食事制限をするという意味での「精進」は行いません。

浄土真宗における「精進落とし」がなぜ行われるのか

なぜ浄土真宗の葬儀や法要の後にも、「精進落とし」と呼ばれるような会食の席が設けられることがあるのでしょうか。

これは、他の宗派の習慣が広く社会に浸透している影響や、葬儀に参列してくださった方々や、読経してくださった僧侶への感謝と労いの気持ちを表すため、そして故人様を偲び、思い出を語り合う場として、会食の機会が設けられるようになったと考えられます。

浄土真宗において、このような葬儀や法要後の会食は、本来の意味での「精進落とし」や「精進上げ」ではなく、「お斎(おとき)」または「御斎(おとき)」と呼ばれることが一般的です。

この「お斎」は、故人様への供養というよりも、仏法にふれるご縁をいただいたことへの感謝、そして集まった人々が共に故人様を偲び、仏様の教えに耳を傾ける大切な機会と捉えられます。

浄土真宗で行う「お斎(精進落としの代わり)」とは

浄土真宗で行う「お斎(精進落としの代わり)」とは

「お斎」の目的と意味

浄土真宗における「お斎」の主な目的は以下の通りです。

  • 僧侶や参列者への感謝と慰労: 葬儀や法要に際し、お世話になった僧侶や、お忙しい中駆けつけてくださった参列者の方々へ、感謝の気持ちを表し、労をねぎらうため
  • 故人を偲び、思い出を語り合う場: 参列者が集い、故人様の生前の思い出や人となりを語り合い、共に偲ぶための大切な時間
  • 仏法とのご縁を深める: 食事を共にしながら、僧侶から法話をいただくなど、仏様の教えに触れる機会
  • 葬儀・法要の区切り: 儀式が無事に終わったことへの安堵と、一つの区切りとしての意味合い

「お斎」を行うタイミング

「お斎」を行うタイミングは、葬儀・告別式の後、火葬場から戻ってから(繰り上げ初七日法要の後など)、年忌法要の後に行われます。

「お斎」で振舞われる食事

かつてはお斎で振舞われる食事は、精進料理が中心でした。精進料理は、仏教の戒律に基づいて作られた料理で、肉や魚などの動物性の食材を使用せず、野菜や穀物、豆類などを中心に使用します。

近年では、精進料理にこだわらず、故人の好きだった料理や、参列者の好みに合わせた料理、肉や魚を使った料理も増えています。

お祝いの席ではないため、伊勢海老や尾頭付きの鯛といった、露骨におめでたい印象を与える食材や料理は避けるようにしましょう。

おすすめのメニュー

お斎の料理は、故人の好きだった料理や、参列者の好みに合わせて選ぶのが一般的です。煮物、焼き物、揚げ物、お寿司、お吸い物などは、定番のメニューとしてよく用いられます。また、季節の食材を使った料理や、地元の名産品を使った料理も喜ばれるでしょう。

  • 煮物は、野菜や豆腐、こんにゃくなどを煮込んだ料理で、ヘルシーで食べやすいのが特徴
  • 焼き物は、魚や肉を焼いた料理で、香ばしい香りが食欲をそそります
  • 揚げ物は、天ぷらやフライなどで、サクサクとした食感が楽しめます
  • お寿司は、手軽に食べられるのが魅力で、子供からお年寄りまで幅広い世代に人気

故人が好きだった料理を取り入れる場合は、故人の思い出話などをしながら、美味しくいただきましょう。料理を通じて、故人を偲び、感謝の気持ちを伝えることができます。

飲み物について

飲み物は、お酒とソフトドリンクの両方を用意します。お酒は、日本酒、ビール、焼酎などが用意し、ソフトドリンクは、ジュース、お茶、水などが用意するようにします。参列者の年齢層や好みに合わせて、準備するようにしましょう。

献杯には、日本酒が用いられることが多いです。日本酒は、神聖な飲み物として、古くから儀式などで用いられてきました。献杯の際には、日本酒をグラスに注ぎ、故人に黙祷を捧げ、静かに飲み干します。献杯が終わったら、他の飲み物も自由に飲んでいただいて構いません。

飲み物を用意する際には、アルコールアレルギーの方や、お酒が飲めない方にも配慮する必要があります。ソフトドリンクの種類を豊富に用意したり、ノンアルコールビールを用意したりするなど、配慮を心がけましょう。

浄土真宗の「お斎」でのマナー

席順と挨拶

席順は、僧侶が上座、喪主や遺族が末席となるのが一般的です。開始の挨拶は喪主が行い、故人への感謝と参列者への感謝を述べます。

僧侶には上座に座っていただき、喪主や遺族は末席に座るのが通例です。親族は故人と近い関係にあるため、上座に近い席に座ることが多いです。

友人や知人は、親族よりも下座に座ることが一般的です。席順が決まったら、参列者に案内し、スムーズに着席できるように配慮しましょう。

開始の挨拶は喪主が行い、挨拶の内容は、故人の冥福を祈るとともに、参列者への感謝を述べるものが一般的です。挨拶の際には、故人の名前や人となり、生前のエピソードなどを交えながら、故人を偲ぶ言葉を添えることもあります。

挨拶の長さは、参列者を退屈させないよう3分程度を目安にしましょう。挨拶が終わったら、献杯に移ります。

献杯と会食

献杯は、故人の冥福を祈り、故人を偲ぶために行われる儀式です。献杯を行う際には、まず、全員で起立し、献杯の音頭を取る人が「献杯」と発声します。

その後、全員でグラスを少し持ち上げ、故人に黙祷を捧げます。黙祷が終わったら、「献杯」と静かに唱え、グラスの酒を少し口に含みます。献杯が終わったら、着席し、会食に移ります。

会食中は、故人の思い出話などを語り合い、故人を偲ぶ時間を過ごしましょう。故人の好きだった食べ物や飲み物を用意したり、故人の写真やビデオを上映したりするのも良いでしょう。

ただし、会食中は、大声で騒いだり、不謹慎な話をしたりすることは避けましょう。故人を偲び、静かに和やかに過ごすことが大切です。

会食の時間は、2時間程度が目安です。時間が長すぎると、参列者が疲れてしまう可能性があります。適度な時間で切り上げ、参列者に感謝の気持ちを伝えて解散しましょう。

僧侶に法話をお願いする場合は、食事の前か、食事が一段落した頃がよいでしょう。

お斎(精進落とし)をしない場合:浄土真宗での対応

御膳料の準備

御膳料は、僧侶がお斎(精進落とし)に参加されない場合に、食事の代わりとしてお渡しするものです。金額は、地域や寺院によって異なりますが、一般的には、5千円から1万円程度が目安とされています。金額が分からない場合は、事前に寺院に確認するようにしましょう。

御膳料は、白い封筒に入れ、表書きには「御膳料」と記載します。裏書きには、喪主の氏名を記載します。封筒に入れるお札は、新札を用意するのがマナーです。

御膳料は、僧侶にお渡しする際に、「本日はお忙しい中、誠にありがとうございます。ささやかですが、御膳料をお納めください」と挨拶を添えてお渡ししましょう。

御膳料は、香典とは別に用意する必要があります。香典は、故人の霊前にお供えするものであり、御膳料は、僧侶に対するお礼としてお渡しするものです。混同しないように注意しましょう。

引き出物の用意

お斎(精進落とし)の代わりに、参列者へ引き出物を渡す場合があります。引き出物は、葬儀や法要の参列者へ、感謝の気持ちを込めて贈る品物です。

お斎を行わない場合は、引き出物を渡すことで、参列者への感謝の気持ちを表すことができます。引き出物の金額は、一般的に、3千円から5千円程度が目安とされています。

引き出物の内容は、タオル、お菓子、石鹸などが定番ですが、最近では、カタログギフトなども人気があります。

引き出物を選ぶ際には、参列者の年齢層や好みを考慮することが大切です。また、故人の宗派や遺族の意向も尊重するようにしましょう。引き出物には、挨拶状を添えるようにしましょう。挨拶状には、参列への感謝の気持ちと、故人を偲ぶ言葉を記載します。

挨拶状の送付

挨拶状は、葬儀や法要後に、参列者へ感謝の気持ちを伝えるために送るものです。お斎(精進落とし)を行わない場合は、挨拶状の中で、その旨を伝えるとともに、参列者への配慮を示すことが大切です。

挨拶状には、参列への感謝の気持ち、故人を偲ぶ言葉、そして、精進落としを行わない理由などを記載します。

挨拶状は、葬儀や法要後、できるだけ早く送るのがマナーです。遅くとも、1週間以内には送るようにしましょう。

挨拶状は、手書きで書くのが最も丁寧ですが、最近では、印刷された挨拶状を送ることも一般的です。挨拶状を送る際には、切手は弔事用のものを使用しましょう。

挨拶状を送ることで、参列者への感謝の気持ちを伝えるとともに、お斎を行わないことに対する理解を求めることができます。丁寧な挨拶状を送ることで、参列者との良好な関係を維持することができます。

まとめ

浄土真宗のお斎(精進落とし)は、故人を偲び、参列者への感謝を伝える大切な機会です。マナーを守り、心温まる精進落としを行いましょう。葬儀について不明な点があれば、株式会社葬儀のこすもすのような専門業者に相談することをおすすめします。

お斎は、故人の霊前で、あるいは故人の遺影を前に、参列者一同が故人を偲び、その生涯を振り返る時間を持つことが、その本質的な意義です。

故人が生前親しくしていた人々が集まり、故人との思い出を語り合うことで、故人の存在を改めて確認し、故人への感謝の念を深めます。

お斎を行う際には、日程や場所の決定、席順や挨拶、料理や飲み物など、様々な準備が必要となります。また、浄土真宗ならではのマナーも存在します。不明な点があれば、葬儀社などの専門業者に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

心温まるお斎を行うことで、故人を偲び、参列者への感謝の気持ちを伝えるとともに、参列者一同の心の安らぎにも繋がります。