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戒名とは?意味・付け方・相場を分かりやすく解説

戒名とは?意味・付け方・相場を分かりやすく解説
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宮坂
宮坂
「無宗教のデメリットって何だろう?」「戒名(かいみょう)って一体何?」「どうして必要なの?」「どうやって付けられるの?」「費用はどれくらいかかるの?」など、さまざまな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんな戒名に関するあらゆる疑問を一つひとつ丁寧に解きほぐし、「戒名とは何か」という基本から、その深い意味、宗派による違い、そして具体的な付け方や費用相場、さらには近年関心が高まっている生前戒名に至るまで、どこよりもわかりやすく、そして詳しく解説していきます。

戒名とは?その意味と由来

仏様の弟子になった証

戒名とは、簡単に言えば、仏様の弟子になった証として授けられる名前のことです。
仏教では、亡くなった方は仏様の弟子となり、仏様の教え(戒律)を守り、修行の道を歩むことで、悟りを開き、安らかな仏の世界(浄土)へ往生すると考えられています。

この「戒」という字は、仏教徒が守るべき戒律や規範を意味します。つまり、戒名を授かるということは、「私は仏様の教えを守り、仏弟子として生きていきます(あるいは、生きていました)」という誓いの表明でもあるのです。

生前に仏門に入り、戒を授かった方だけでなく、多くの場合、亡くなられた後に、故人が仏様の弟子となる儀式(授戒会:じゅかいえ)を経て、戒名が授けられます。これにより、故人は迷うことなく仏様の導きを受けられるとされています。

戒名の歴史と広まり

日本で戒名が広まったのは、江戸時代に寺請制度が確立されたことが大きな要因です。人々が寺院に所属することで、戒名が一般化しました。寺請制度は、幕府が民衆を把握し、キリスト教徒ではないことを証明するために設けられた制度でした。

この制度のもとで、人々は必ずいずれかの寺院に所属する必要があり、その際に戒名を授かることが一般的となりました。つまり、戒名は宗教的な意味合いだけでなく、社会的な身分証明としての役割も担っていたのです。

江戸時代以前にも戒名は存在していましたが、主に貴族や武士など、限られた階層の人々が授かるものでした。しかし、寺請制度の導入によって、庶民の間にも広く普及し、現在のような形になったのです。

戒名の歴史を辿ると、当時の社会制度や宗教観が色濃く反映されていることがわかります。戒名は、単なる名前ではなく、日本の歴史と文化を象徴するものでもあるのです。

なぜ戒名が必要なの?授かる意味と目的

1.故人が浄土へ迷わず行くため

最も大きな理由は、故人が安らかに浄土へ往生するためです。仏教の教えでは、戒名を授かることで、故人は仏様の世界への通行手形を得るようなものと考えられています。

現世の名前(俗名:ぞくみょう)のままでは、仏様の導きを受けにくい、あるいは迷ってしまう可能性があるため、仏弟子としての新しい名前が必要とされるのです。

2.仏弟子としての名前

出家した僧侶が仏門に入る際に名前を改めるように、在家の人も亡くなった後(あるいは生前)に戒名を授かることで、正式に仏様の弟子として認められます。これは、故人が仏教の教えに帰依し、その道を歩むことを意味します。

3.生前の行いや信仰心を表す

戒名には、故人の生前の人となりや功績、信仰の深さなどが反映されることがあります。特に「院号」や「道号」といった部分は、社会や寺院への貢献度、あるいはその人の生き方や特技などが考慮されて付けられることがあります。

これにより、戒名は故人を偲ぶ上での大切な手がかりともなり得ます。

戒名と法名の違い

「戒名」は、主に浄土真宗以外の宗派(たとえば曹洞宗や天台宗など)で用いられる名前です。戒名は故人が仏の教えを守る存在、つまり仏門に入った者としての証しであり、死後に仏の世界へ導かれるための名前とされています。

通常、戒名はお寺の僧侶が故人の人柄や生前の行い、信仰の深さなどを考慮して付けます。戒名を授かることで、仏門に帰依した者としての尊厳を持って葬送されるとされます。

一方、「法名」は浄土真宗で用いられる呼び名で、こちらは基本的に生前に授かるものです。浄土真宗では、阿弥陀如来の救いを信じることで誰もが往生(極楽浄土に生まれ変わること)できるとされており、死後に戒律を授けるという考え方はありません。

法名は、仏弟子としての名前であり、「帰敬式(ききょうしき)」という儀式を通じて授与されます。この儀式は、阿弥陀如来への信仰を誓い、正式に仏教徒となることを意味します。

戒名の構成:4つの部分とその意味

戒名の構成:4つの部分とその意味

戒名は、実はいくつかの部分から成り立っており、それぞれに意味が込められています。一般的に、戒名は2文字で構成されると思われがちですが、多くの場合、「院号(いんごう)」「道号(どうごう)」「戒名(かいみょう)」「位号(いごう)」の4つの要素で構成されています。これらを組み合わせたものが、私たちが一般的に目にする戒名です。

ただし、宗派や寺院、個人の信仰のあり方によっては、これらの要素がすべて含まれるわけではありません。特に浄土真宗では考え方が異なります。

ここでは、一般的な構成について、紹介します。

戒名は複数の文字で構成されています。
例として、「〇〇院△△□□信士」という戒名があったとします。これは以下のように分解できます。

  1. 〇〇院:院号
  2. △△:道号
  3. □□:戒名(本来の戒名部分)
  4. 信士:位号

これらの文字数は決まっているわけではなく、全体で6文字から10文字以上になることもあります。

①院号(いんごう):社会や寺院への貢献の証

「院」という字がつくことからわかるように、本来は寺院を建立したり、寺院の護持発展に大きく貢献したりした人、あるいは社会的に高い地位にあった人、篤い信仰心を持った人に贈られるものです。

戒名の中で最も上位に位置づけられ、非常に名誉なものとされています。すべての戒名に付くわけではありません。

例:「〇〇院」「△△寺院」など。

②道号(どうごう):悟りへの道を示す号

仏道における悟りへの道を表す号で、故人の性格、趣味、職業、あるいは縁のあった土地の名前など、その人となりを表す文字が選ばれることが多いです。本来は禅宗で用いられていましたが、他の宗派にも広まりました。

個性を表現する部分であり、故人を偲ぶ上で重要な手がかりとなります。2文字で構成されるのが一般的です。

例:趣味が山登りなら「岳△」、穏やかな性格なら「静△」など。

③戒名(かいみょう):本来の戒名部分、仏弟子としての名前

これが狭義の「戒名」であり、仏弟子としての名前そのものを指します。多くの場合、俗名の一字と、仏教の経典や仏様の名前から一字を取って組み合わせるか、あるいは宗派の教えにちなんだ文字が選ばれます。

通常2文字で構成されます。この部分があることで、故人が仏法に帰依したことを示します。

例:俗名が「太郎」なら「太△」、経典から「光」の字を取って「光△」など。

④位号(いごう):性別や年齢、信仰の深さを示す称号

戒名の最後に付けられ、故人の性別、年齢、社会的地位、そして仏教への信仰の深さや貢献度などを示す一種の階級や称号です。

これにより、戒名の「格」が決まるとも言えますが、本来は優劣をつけるものではなく、その人のありようを示すものとされています。

例:成人男性なら「信士(しんじ)」「居士(こじ)」、成人女性なら「信女(しんにょ)」「大姉(だいし)」、子供なら「童子(どうじ)」「童女(どうにょ)」などがあります。

戒名料の相場

ここでは、一般的な宗派で用いられる代表的な位号と、その意味、そしてあくまで目安としてのお布施の相場をご紹介します。お布施は「戒名の値段」ではなく、あくまでお寺への感謝の気持ちを表すものです。

位号(読み方) 対象 お布施の目安 意味・特徴
信士(しんじ) 成人男性 30万円~50万円程度 仏教の教えを信じ、実践する男性。最も一般的な位号。
信女(しんにょ) 成人女性 30万円~50万円程度 仏教の教えを信じ、実践する女性。最も一般的な位号。
居士(こじ) 成人男性 50万円~80万円程度 在家のままで仏道に帰依し、篤く信仰する男性。社会的に貢献した人など。
大姉(だいし) 成人女性 50万円~80万円程度 在家のままで仏道に帰依し、篤く信仰する女性。社会的に貢献した人など。
院信士(いんしんじ) 成人男性 80万円~100万円以上 信士の上に「院号」が付いたもの。寺院や社会への貢献が大きい男性。
院信女(いんしんにょ) 成人女性 80万円~100万円以上 信女の上に「院号」が付いたもの。寺院や社会への貢献が大きい女性。
院居士(いんこじ) 成人男性 100万円以上 居士の上に「院号」が付いたもの。特に寺院や社会への貢献が著しく、信仰が篤い男性。
院大姉(いんだいし) 成人女性 100万円以上 大姉の上に「院号」が付いたもの。特に寺院や社会への貢献が著しく、信仰が篤い女性。
童子(どうじ) 15歳位までの男の子 10万円~30万円程度
童女(どうにょ) 15歳位までの女の子 10万円~30万円程度
孩子(がいし) 幼児(男の子) 10万円~30万円程度
孩女(がいにょ) 幼児(女の子) 10万円~30万円程度
水子(みずこ) 死産・流産した胎児 志(お気持ち)

 

宮坂
宮坂
経済的な事情がある場合も、正直に相談することで、お寺側も配慮してくださることがあります。

宗派による戒名の違いと特徴

仏教には多くの宗派があり、戒名に関する考え方や呼び方、構成にも違いがあります。ここでは、代表的な宗派の特徴をご紹介します。

浄土真宗の場合:「法名(ほうみょう)」

浄土真宗では、一般的に「戒名」とは言わず、「法名(ほうみょう)」と呼びます。これは、阿弥陀仏の救いを信じれば誰でも等しく浄土へ往生できるという教えに基づき、厳しい戒律を守る必要がないとされるためです。「戒」の字を用いません。

法名は、多くの場合「釋(しゃく)」または「釋尼(しゃくに)」の字の下に2文字が付きます(例:「釋〇〇」「釋尼△△」)。「釋」は、お釈迦様の弟子であることを意味します。院号が付くこともありますが、道号や位号は基本的に用いません。

お布施も、他の宗派に比べて比較的抑えられる傾向にあると言われています。

日蓮宗の場合:「法号(ほうごう)」または「日号(にちごう)」

日蓮宗では、「戒名」または「法号(ほうごう)」と呼びます。特徴的なのは、男性には「日〇」、女性には「妙〇」という字が戒名の上(道号の位置)に付くことが多い点です。これは日蓮聖人や法華経への帰依を示すものです。

位号としては「信士・信女」などが用いられますが、院号が付くこともあります。
「日号」は、特に信仰の篤い信者や僧侶に与えられる尊称で、「日蓮聖人のように法華経を弘める者」という意味合いがあります。

その他の宗派(天台宗、真言宗、浄土宗、臨済宗、曹洞宗など)

これらの宗派では、一般的に「戒名」と呼び、前述した「院号・道号・戒名・位号」の構成が基本となります。ただし、それぞれの宗派の教義や伝統によって、文字の選び方や重視する点に特徴が出ることがあります。

例えば、真言宗では、大日如来との結びつきを示す梵字(ぼんじ)が戒名の上に記されることがあります(位牌などに)。曹洞宗や臨済宗といった禅宗系では、「道号」が重視される傾向があります。

戒名を授かるタイミング

戒名を授かるタイミングは、主に以下の2つです。

1.一般的には逝去後

多くの場合、人が亡くなられた後、通夜や葬儀の前に授けられます。具体的には、枕経(まくらぎょう:亡くなられた方の枕元であげるお経)の際や、通夜が始まる前に、住職から白木の位牌(仮の位牌)に書かれた戒名が遺族に示されることが多いです。

2.生前戒名という選択肢

最近では、生きているうちに戒名を授かる「生前戒名(せいぜんかいみょう)」を選ぶ方も増えています。

戒名を付けてもらう流れ

菩提寺に戒名を付けてもらう際の一般的な流れは以下の通りです。

1.菩提寺への連絡・相談

ご家族が亡くなられたら、まず最初に菩提寺に連絡し、葬儀の日程などを相談するとともに、戒名の授与をお願いします。この際、故人が生前に希望していた戒名(もしあれば)や、予算についてもお伝えしておくとスムーズです。

2.故人の情報伝達(人となり、趣味、職業など)

住職が戒名を選ぶ際には、故人の生前の人となり、性格、趣味、職業、社会的な活動、信仰心などを参考にします。これらの情報をできるだけ詳しく伝えることで、故人にふさわしい、より心のこもった戒名を授けてもらいやすくなります。

俗名の一字を使いたい、故人が好きだった言葉を入れたいなどの希望があれば、この時に伝えてみましょう。ただし、必ずしも希望通りになるとは限りません。

3.戒名の授与(枕経や通夜、葬儀時)

住職が戒名を選定し、通常は枕経や通夜、葬儀の際に、白木の位牌に書かれた形で遺族に授与されます。この時、戒名の意味や由来について説明がある場合もあります。

4.お布施のお渡し

戒名を授けていただいたこと、そして葬儀の読経などに対する感謝の気持ちとして、お布施をお渡しします。お渡しするタイミングは、葬儀が終わった後や、後日改めてお寺にお礼に伺う際などが一般的です。

お布施は、白い無地の封筒に入れるか、不祝儀袋(「御布施」と表書き)に入れてお渡しします。金額や渡し方については、事前に確認しておくと安心です。

菩提寺がない場合はどうする?

菩提寺がない、あるいは遠方で付き合いがないというケースも増えています。そのような場合は、以下の方法で戒名を授けてくれる寺院を探すことになります。

 親族の菩提寺に相談
もし本家や親戚に菩提寺があれば、そこに相談してみるのが一つの方法です。同じ宗派であれば、受け入れてもらえる可能性があります。

 葬儀社に相談して寺院を紹介してもらう
多くの葬儀社は、さまざまな宗派の寺院と提携しています。葬儀を依頼する際に、戒名もお願いしたい旨を伝えれば、宗派や予算に応じて適切な寺院を紹介してくれます。これは比較的スムーズな方法です。

最近では、インターネットを通じて戒名を授けてくれるサービスや寺院も見受けられます。手軽で費用が抑えられる場合もありますが、あまりに安価な場合や、実態がよくわからない場合は慎重に検討が必要です。

生前戒名とは?メリット・デメリットと授かり方

近年、終活の一環として「生前戒名(せいぜんかいみょう)」を授かる方が増えています。これは、生きているうちに自分自身の戒名を授けてもらうことです。戒名の授かり方については、基本的には亡くなった後に授かる場合と変わりありません。

生前戒名のメリット

生前に戒名を授かることには、いくつかのメリットがあります。

自分で納得のいく戒名を授かれる
自分の人生や価値観を住職に直接伝えることで、より自分らしい、納得のいく戒名を授かることができます。故人となってからでは伝えられない思いを反映させることが可能です。
家族の負担を軽減できる
亡くなった後、家族は悲しみの中で葬儀の準備や戒名の手配など、多くのことを短時間で決めなければなりません。生前に戒名を準備しておくことで、家族の精神的・経済的な負担を軽減できます。
信仰を深めるきっかけになる
授戒の儀式を通じて仏教の教えに触れることで、信仰心が深まったり、これからの生き方を見つめ直す良い機会になったりすることがあります。
費用を準備しやすい
戒名にかかるお布施を事前に把握し、計画的に準備することができます。

生前戒名のデメリットと注意点

一方で、生前戒名にはいくつかの注意点もあります。

菩提寺によっては受け付けてもらえない場合も
菩提寺の方針によっては、生前戒名を受け付けていない、あるいは積極的ではない場合があります。まずは菩提寺に相談することが不可欠です。
気持ちの変化の可能性
生きている間に考え方や信仰心が変わる可能性もゼロではありません。
授かった後の扱い
生前戒名を授かった場合、その戒名が書かれたものをどのように保管しておくか、家族にどう伝えておくかなどを考えておく必要があります。

よくある質問

戒名は必ず付けなければいけないの?

仏式の葬儀を行い、菩提寺のお墓に納骨する場合は、基本的に戒名が必要です。お寺は戒名を授かった仏弟子を供養するという考え方が根底にあるためです。しかし、無宗教の葬儀(自由葬など)を行ったり、公営の霊園や宗教不問の納骨堂を利用したりする場合は、必ずしも戒名が必要というわけではありません。

自分で戒名を付けることはできる?

仏教の教義上、戒名は僧侶から授かるものです。自分で考えた名前を「戒名」としてお寺に認めてもらうことは、原則としてできません。お寺との関係を良好に保ち、故人をきちんと供養するためには、やはり住職に依頼するのが一般的です。ただし、希望する文字や故人の人となりを伝えることで、ある程度意向を反映してもらえる可能性はあります。

戒名なしで納骨やお墓に入ることはできる?

菩提寺のお墓に入る場合は、戒名がないと納骨を断られることがほとんどです。お寺は、そのお寺の檀家であり、仏弟子となった方(戒名を授かった方)を受け入れるという考え方が基本だからです。

戒名を変更することはできる?

一度授かった戒名を変更することは、基本的には難しいと考えた方が良いでしょう。戒名は故人が仏様の弟子になった証であり、非常に重い意味を持つものです。ただし、何らかの特別な事情がある場合は、授かったお寺に相談してみることは可能です。

戒名料が高いと感じる場合はどうすればいい?

お布施の金額は、あくまでお寺への感謝の気持ちであり、定価があるわけではありません。しかし、提示された目安額が高いと感じる場合や、経済的に厳しい場合は、正直に菩提寺の住職に相談してみましょう。事情を汲んで、配慮してくださることもあります。

まとめ

戒名は、単なる死後の名札ではありません。故人が仏様の弟子となり、安らかに浄土へ往生するための大切な導きであり、残された私たちが故人を偲び、供養していく上での心の拠り所ともなるものです。

もちろん、戒名に関する考え方や価値観は人それぞれですし、宗派によっても異なります。しかし、その本質的な意味を理解することで、いざという時に慌てず、故人にとっても、そしてご自身にとっても最善の選択ができるようになるはずです。

戒名について疑問や不安があれば、まずは菩提寺の住職に相談することが何よりも大切です。率直に話し合うことで、きっと道が開けるでしょう。

この記事が、あなたの戒名に対する理解を深め、心穏やかな供養のお手伝いができたなら、これ以上の喜びはありません。