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焼香の意味と正しいやり方?宗派別の作法や注意点も解説

焼香の意味と正しいやり方?宗派別の作法や注意点も解説
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宮坂
宮坂
「焼香の正しい作法が分からない」「宗派によって違いがあるの?」「そもそも焼香ってどんな意味があるんだろう?」と、いざその場に立つと不安に感じたり、戸惑ったりする方も少なくありません。

この記事では、焼香の基本的な「意味」から、具体的な「作法」、宗派による違い、そして知っておきたいマナーや注意点までを、網羅的に解説します。

この記事をお読みいただければ、焼香に関する疑問や不安が解消され、故人様とのお別れの時間を心を込めて過ごすことができるでしょう。

焼香とは何か?その意味と由来

焼香(しょうこう)とは?

焼香とは、仏教の儀式において香(お香)を焚いて仏前に供える行為を指します。主に葬儀や法要の際に行い、亡くなった方の冥福を祈るとともに、参列者が心を込めて供養の意を表す大切な所作です。

仏教において香は「清浄」「浄化」「供養」を意味し、自分の身と心を清める象徴でもあります。香を焚くことで場を浄め、故人の魂に祈りを届ける行為とされています。

葬儀においては、一般的に読経中に喪主、ご遺族、親族、参列者の順に行われます。法事においても、故人様の年忌に合わせて焼香が行われます。

焼香の歴史的背景

焼香は、古代インドで始まったとされ、仏教とともに中国、そして日本へと伝わりました。当初は、貴重な香木を焚いていましたが、時代とともに、抹香や線香など、様々な形に変化してきました。

焼香の歴史は、仏教の歴史と深く結びついており、その変遷は、仏教の教えが様々な文化の中でどのように受容され、変化してきたのかを物語っています。

古代インドでは、香木は貴重なものであり、王族や貴族など、限られた人々しか使用することができませんでした。しかし、仏教が広まるにつれて、香木は仏様への供養として用いられるようになり、徐々に一般の人々にも広まっていきました。

中国に仏教が伝わると、香木だけでなく、様々な種類の香が用いられるようになり、焼香の儀式もより洗練されたものになっていきました。日本では、仏教の伝来とともに焼香の習慣も伝わり、独自の発展を遂げました。

特に、茶道や香道といった日本の伝統文化は、焼香の精神と深く結びついており、日本の文化を語る上で欠かすことのできない要素となっています。現代では、焼香は、葬儀や法要だけでなく、家庭での仏壇供養など、様々な場面で行われるようになり、私たちの生活に深く根付いています。

焼香で使われる香

香で使われる香には、主に二種類あります。

  • 抹香(まっこう): 粉末状になっている香です。葬儀会場でよく見かける、香炉に灰が入っており、そこに一つまみ香をつまんで、くべる形式の焼香で用いられます。
  • 線香(せんこう): 棒状になっている香です。仏壇に手を合わせる際などに一般的に用いられます。葬儀においても、会場の設備によっては線香を用いる「線香焼香」を行う場合があります。

焼香の深い「意味」

焼香に込められた主な「意味」は、以下のように言われています。

心身の浄化

仏教では、お香には心や体を清める力があるとされていて、焼香を行うことで、自身の心身のけがれを払い、清らかな状態で故人様や仏様と向き合うことができると考えられています。

私たちは日々の生活の中で、様々な煩悩や雑念を抱えがちですが、お香の香りはそれらを鎮め、心を落ち着かせる効果があると言われます。

故人様や仏様への供養

古来より、香りは仏様のお食事であるとも言われて、焼香は故人様や仏様に対し、清らかな香りを捧げることで供養の気持ちを表す行為とされています。

また、仏様の慈悲は香りとなって世界中に広がる、とも言われます。焼香は、その香りに乗せて故人様の冥福を祈る、供養の形なのです。

空間の浄化

お香の香りは、その場の空気を清める力も持っています。かつては、今ほど衛生状態が良くなかった時代に、死のけがれや病気の感染を防ぐという意味合いもあったと言われています。現代においては、場の雰囲気を引き締め、厳粛な空間を作り出すという役割も担っています。

故人様への祈り、対話

焼香を行う時間は、故人様と向き合い、心の中で語りかける大切な時間でもあります。故人様への感謝の気持ち、別れを惜しむ気持ち、安らかな旅立ちを願う気持ちなど、様々な思いを込めて香をくべます。形式的な動作だけでなく、故人様への思いを馳せながら行うことが何よりも大切です。

仏様の世界へ導く

お香の香りは、仏様の世界(浄土)まで届くと言われています。焼香を行うことで、故人様の魂が迷うことなく、安らかに仏様の世界へ旅立てるよう手助けするという意味合いも込められています。

焼香の基本的な「作法」

お焼香

葬儀や法事の形式によって立ち焼香、座り焼香、回し焼香などいくつかの種類がありますが、ここではまず共通する基本的な流れを説明します。

1.焼香台への進み方

自分の番が来たら、まず席から立ち上がり、祭壇に向かって一礼します。その後、数珠を左手に持ち(あるいは左手首にかけ)、静かに焼香台の前に進みます。この際、遺族の方々にも軽く一礼をすることが丁寧な作法とされています。

2. 祭壇(ご本尊・ご位牌)への合掌・一礼

焼香台の前に着いたら、まず祭壇に安置されているご本尊(仏様)や故人様の位牌、遺影に向かって合掌し、一礼します。故人様への敬意を表すとともに、これから焼香を行うことを心の中で伝えます。

3. 焼香を行う

抹香をつまむ: 右手の親指、人差し指、中指の三本で、香炉のそばにある抹香を一回の焼香につき一つまみ、丁寧に取ります。

香炉に落とす: つまんだ抹香を、香炉の中にくべます。香炉には炭が置かれており、その上で抹香が燃えて香りが立ちます。

「つまんで香炉に落とす」という動作を、決められた回数行いますが、宗派によって違いがあるため、迷う場合は他の参列者の方の回数を参考にしたり、係の方に尋ねたりしても構いません。心を込めて行うことが一番大切です。

4. 再び合掌・一礼

焼香を終えたら、再び祭壇(ご本尊・ご位牌)に向かって合掌し、一礼します。故人様への供養の気持ちを込めます。

5. 席に戻る

祭壇への合掌・一礼を終えたら、体を少しずらして焼香台から離れ、遺族の方々に再び軽く一礼してから自分の席に戻ります。

具体的な3つの焼香の「作法」

焼香の方法には、葬儀が行なわれる場所や規模に合わせて、「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」と呼ばれる3種類の方法があります。

立礼焼香(りつれいしょうこう)

立礼焼香

もっとも一般的な形式で、通夜・葬儀の際によく見られます。焼香台の前まで進み、立ったまま焼香を行う方法です。

  1. 自分の番が来たら: 席から立ち上がり、祭壇に向かって一礼します。数珠を左手に持ち、静かに焼香台へ進みます。
  2. 焼香台の前へ: 焼香台の約一歩手前で立ち止まります。遺族に軽く一礼します。
  3. 祭壇に合掌・一礼: 祭壇のご本尊や位牌、遺影に向かって合掌し、一礼します。
  4. 焼香: 焼香台に進み、姿勢を正して行います。
    • 右手で抹香をつまみます。(回数は宗派によります)
    • 香炉に静かにくべます。
    • 決められた回数繰り返します。
  5. 再び祭壇に合掌・一礼: 焼香が終わったら、焼香台の前で再び祭壇に向かって合掌し、一礼します。
  6. 遺族に一礼: 体を少しずらして焼香台から離れ、遺族の方々に向き直って軽く一礼します。
  7. 席に戻る: 静かに自分の席に戻ります。

スムーズな人の流れを妨げないよう、落ち着いて、しかしあまり時間をかけすぎずに行うようにしましょう。

座礼焼香(ざれいしょうこう)

座礼焼香

法要などで畳敷きの会場に座って焼香する形式です。座ったまま行うため、落ち着いた所作が求められます。

  1. 自分の番が来たら: 席で正座し、祭壇に向かって一礼します。
  2. 焼香台へ進む: 膝をついたまま(膝行・しっこう、あるいは膝退・しったい)で焼香台の前まで進むのが正式な作法ですが、畳を傷めたり、慣れない場合は無理せず立ち上がって移動し、焼香台の前で再び正座しても構いません。数珠は左手に持ちます。遺族に軽く一礼します。
  3. 祭壇に合掌・一礼: 焼香台の前に正座したら、祭壇のご本尊や位牌、遺影に向かって合掌し、一礼します。
  4. 焼香: 焼香台に進み、正座したまま行います。
    • 右手で抹香をつまみます。(回数は宗派によります)
    • 香炉に静かにくべます。
    • 決められた回数繰り返します。
  5. 再び祭壇に合掌・一礼: 焼香が終わったら、焼香台の前で再び祭壇に向かって合掌し、一礼します。
  6. 遺族に一礼: 体を少しずらして焼香台から離れ、遺族の方々に向き直って軽く一礼します。
  7. 席に戻る: 膝行・膝退で戻るか、立ち上がって戻り、自分の席で再び正座します。

畳の上での移動や正座に慣れていないと少し難しいかもしれません。無理のない範囲で、丁寧な動作を心がけましょう。

回し焼香(まわししょうこう)

回し焼香

自宅での葬儀や、参列者が少ない場合など、会場のスペースが限られている場合に行われることがあります。香炉と抹香が載ったお盆(回し香炉盆)が、参列者の間を回ってきます。

  1. 回し香炉盆を受け取る: お盆が回ってきたら、次の人に会釈をしてから両手で受け取ります。自分の前に置くか、膝の上に置きます。
  2. 祭壇に合掌・一礼: お盆を自分の前に置いたまま、祭壇のご本尊や位牌、遺影に向かって合掌し、一礼します。
  3. 焼香: お盆の中の香炉で焼香を行います。
    • 右手で抹香をつまみます。(回数は宗派によります)
    • 香炉に静かにくべます。
    • 決められた回数繰り返します。
  4. 再び祭壇に合掌・一礼: 焼香が終わったら、お盆を自分の前に置いたまま、再び祭壇に向かって合掌し、一礼します。
  5. 次の方へ回す: 次の方にお盆を回します。回す際は、両手でお盆を持ち、相手が受け取りやすいように渡します。次の人への会釈も忘れずに行います。

スムーズにお盆を回せるよう、前の人が終わるのを確認したらすぐに受け取る準備をしましょう。

宗派による焼香の「作法」の違い

焼香の作法、特に抹香を「おしいただくか(つまんだ抹香を額の高さまで持ち上げるか)」や「何回行うか」については、宗派によって違いがあります。同じ宗派内でもお寺や地域によって若干異なる場合もあります。

宗派 焼香の回数 おしいただく
浄土真宗本願寺派 1回 行わない
浄土真宗大谷派 2回 行わない
曹洞宗 2回 1回目のみ行う
臨済宗 1回または2回 行う
日蓮宗 1回または3回 行う
真言宗 3回 行う
天台宗 1回または3回 行う

※宗派が分からない場合は「1回、額に当てずに焼香する」のが無難です。

「おしいただく」とは?
抹香をつまんだ後、すぐに香炉にくべるのではなく、一度右手でつまんだ抹香を左手を軽く添えながら、額の高さまで持ち上げる動作を「おしいただく」と言います。

宗派が分からない場合はどうすれば良い?

参列する葬儀の宗派が分からない場合は、無理に宗派別の作法にこだわる必要はありませんが、可能なら葬儀社のスタッフやご遺族に、宗派や焼香の回数を確認するようにしましょう。

確認が難しい場合は、一般的に最も多いとされる「1回」または「2回」の焼香を行い、おしいただくかどうかは行っても行わなくても失礼にはあたりません。または、周りの方の作法を参考にするようにしましょう。

あまり作法に囚われすぎて不安になるよりも、心を込めて焼香を行うことが何よりも故人様への供養となります。

線香焼香(せんこうじょうこう)の作法

線香焼香

会場の設備や宗派によっては、抹香ではなく線香で焼香を行う場合があります。線香焼香の基本的な作法は以下の通りです。

  1. 焼香台へ進む: 立ち焼香や座り焼香と同様に、席から進みます。
  2. 祭壇に合掌・一礼: 祭壇にご本尊や位牌、遺影に向かって合掌し、一礼します。
  3. 線香に火をつける: 焼香台にあるロウソクから線香に火をつけます。
  4. 炎を消す: 火をつけたら、線香の炎を左手であおぐか、軽く振って消します。息を吹きかけて消すのはマナー違反とされています。
  5.  線香を立てる・寝かせる
    立てる場合: 香炉の灰に、線香をまっすぐに立てます。通常は1本または3本立てることが多いですが、宗派や慣習によります。
    寝かせる場合: 一本ずつ火をつけ、香炉の灰の上に寝かせます。浄土真宗など、宗派によっては線香を寝かせる作法を行うことがあります。
  6. 再び祭壇に合掌・一礼: 線香を供えたら、再び祭壇に向かって合掌し、一礼します。
  7. 席に戻る: 遺族に一礼し、席に戻ります。

線香の本数や立てるか寝かせるかも宗派によって異なりますので、会場の案内に従うか、事前に確認しておくと安心です。

焼香に関する「マナー」と「注意点」

焼香の作法だけでなく、葬儀や法事の場における全体的なマナーを把握しておくことも大切です。

服装と数珠

  • 服装: 葬儀や法事にふさわしい喪服を着用します。男性はブラックスーツ、女性はブラックフォーマルが基本です。
  • 数珠: 焼香を行う際は、必ず数珠を持参し、左手にかけたり、合掌する際に両手の親指と人差し指の間に挟んだりして使用します。貸し借りをするものではないため、自分の数珠を用意しておきましょう。宗派によって数珠の形が異なりますが、略式数珠であればどの宗派でも使用できます。

静粛にする

焼香中は、私語を慎み、静粛な態度を保ちましょう。故人様を偲び、祈りを捧げる時間です。携帯電話の電源を切るかマナーモードに設定し、焼香中に鳴らないように注意しましょう。

焼香の順番

焼香は、喪主、ご遺族、親族、一般参列者の順に行われるのが一般的です。自分の順番が来るまでは、席で静かに待ちましょう。

体調が優れない場合

葬儀中に体調がすぐれなくなった場合は、無理に焼香台まで進む必要はありません。席で合掌するだけでも、十分に弔意は伝わります。焼香台の手前に椅子が用意されている場合もありますので、必要な場合は利用しましょう。

香炉の灰について

多くの人が焼香を行うと、香炉の灰がいっぱいになることがあります。灰がこんもりと盛り上がっている場合は、次の人が焼香しやすいように、灰を少し平らにならすように軽く触れても構いませんが、基本的には葬儀社のスタッフが調整してくれるので、無理に行う必要はありません。

写真撮影は控える

葬儀や法事の場では、故人様や祭壇を許可なく写真撮影することはマナー違反です。厳粛な場であることを理解し、故人様やご遺族への配慮を忘れないようにしましょう。

焼香に関するよくある疑問

焼香の回数は?宗派が分からない場合は?

宗派が分からない場合は、無理に特定の回数にこだわる必要はありません。一般的に多いとされる「1回」または「2回」で心を込めて行えば失礼にはあたりません。最も確実なのは、葬儀社のスタッフやご遺族に尋ねることです。また、他の参列者の作法を参考にしても良いでしょう。

「おしいただく」とは具体的にどのような動作?

「おしいただく」とは、右手でつまんだ抹香を、額の高さまで持ち上げる動作のことです。必ず行わなければならないわけではなく、宗派によって作法が異なります。特に浄土真宗では行いません。

自宅で弔問する際に焼香は必要?

自宅に弔問に伺った際、仏壇や祭壇があれば焼香(あるいは線香を供える)を行います。自宅では線香を用いることが多いでしょう。基本的な流れは葬儀会場での焼香と同様です。仏壇や祭壇の前で一礼し、線香を上げて手を合わせ、故人様にご挨拶します。

まとめ

この記事では、葬儀や法事における「焼香」について、その「意味」と具体的な「作法」、宗派による違い、そして知っておきたいマナーや注意点までを詳しく解説しました。

焼香は、単なる形式ではなく、故人様の魂を清め、安らかな旅立ちを願い、そして自身の心身を浄化して故人様と向き合うための、深い「意味」が込められた行為です。

立ち焼香、座り焼香、回し焼香といった様々な「作法」がありますが、どれも故人様への弔意を表すためのものです。

宗派によって焼香の回数や「おしいただくか」といった違いはありますが、最も大切なのは、形式にとらわれすぎず、故人様への感謝や別れの気持ちを込めて、心を込めて行うことです。

この記事が、あなたが葬儀や法事に参列する際に抱える焼香への不安を少しでも和らげ、落ち着いて故人様とお別れするための助けとなれば幸いです。